ごあいさつ
過活動膀胱とは
「トイレが我慢できない」、「回数が多い」、「夜中トイレで目が覚める」、「我慢できず漏れてしまう」などの症状を持つ病気です。
現在日本では、10人に1人が症状を持つとされ、年齢とともに増加し、70歳以上の方では5人に1人が悩まれています(下図)。
<原因>
過活動膀胱のタイプは、神経因性・非神経因性に分けられます。
神経因性過活動膀胱とは、明らか神経疾患があり、それが原因と考えられるタイプです。膀胱の働きを調整している神経は、脳神経・脊髄神経・末梢神経がありますが、どれが障害されても過活動膀胱の原因になりえます。
・脳神経の障害:脳梗塞、脳出血、パーキンソン病など
・脊髄疾患の障害:脊髄損傷、多発性硬化症など
・末梢神経障害:糖尿病など
非神経因性過活動膀胱は、上記のような神経疾患がはっきりしないタイプです。多くの場合がこちらのタイプになります。その背景には高血圧・糖尿病・肥満などの生活習慣病や加齢があり、それによる膀胱の血流障害、自律神経の亢進が過活動膀胱を引き起こすと考えられています。
その他男女特有の原因として、男性は前立腺肥大症、女性は女性ホルモンの低下・骨盤底筋が弱ることなども考えられています。
<治療>
①行動療法、②内服治療が早期の治療として推奨され、改善しなければ、③神経変調療法、④ボツリヌス毒素治療などが行われることもあります。
①行動療法
生活指導、膀胱訓練、骨盤底筋体操などを含めた治療です。
生活指導として、減量・運動・禁煙・食事制限・飲水制限などが行われています。
膀胱訓練とは、「トイレに行く事を我慢してもらい、排尿の間隔を伸ばす事で、症状を改善する方法」です。徐々に間隔を伸ばし、最終的には2〜3時間ごとの排尿間隔を目指します。
骨盤底筋体操とは、弱った骨盤底筋を鍛える運動です。海外の報告では、集団指導による効果も良好であったとの報告もされています(詳細はこちら)。
行動療法は副作用も少なく、ガイドラインで推奨されている治療ですが、誰が・どこで・どのように指導するか、明確に決まっておらず、現時点では十分な提供をできていないと思われます。
②内服治療
現在国内での治療は、内服治療を中心として行われています。種類としては、抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬があります。作用部位が異なりますが、どちらも膀胱の過剰収縮を抑え、症状を改善させる効果があります。
抗コリン薬は歴史も古く、多くの臨床研究が行われ効果・安全性が認められています。ただし副作用として口が乾く、便秘などを認めることもあります。
β3アドレナリン受容体作動薬は2011年から使用された薬です。抗コリン薬と作用機序が異なり、口渇や便秘などの副作用も少ないとされています。
参考資料:過活動膀胱診療ガイドライン【第2版】